2013年10月17日木曜日

呪いと食人習慣と日本人

 過去のことを調べていたり、神社について調べていると、まれに“怖い話系”にぶつかることがある。
例えば、
とか、
なんて感じで。
前者は東京23区内のとある公園、後者は埼玉県のとある神社の話。

基本的に私はあまり呪い系を信じない。非科学的なものと一刀両断するつもりはない。オカルト系の話は割と好きで、ひょっとしたらスピリチュアルにハマるポテンシャルはあるのかもしれないが、信じようにも信じられないという感じだ。なんというか、騙すならもっと上手に騙してくれと、そんな感情に近い。

信じないのであれば呪いや迷信が怖くないのかと言われると、そうでもない。多少、怖い。怖いというか、あまり近づきたいとは思わない。正体のしれないものには注意深くあるべきだ。特にそれが不吉なものだと言われているのなら。

・・・。

少し前に、あるホラー小説を読んだ。実話系のノリに近い小説で、作中には作者も登場し、“ノンフィクション体裁のフィクション”といった感じの作品だ。タイトルは残穢。




とあるマンションで起こった怪異を調べるうち、その土地一帯には長い間、不可思議な人死が続いていたことがわかる。家族や土地にまとわりつく死のケガレ。実話体裁なので、色々なホラー小説の裏話も載っていて楽しい。

同じ作者の作品に、ゴーストハントというホラー小説のシリーズがある。


これはちょっと少女小説風で、正直、慣れるのに少し時間がかかったが、面白い小説だった。ここに登場する一家は代替わりのたびに、必ず多くの死人を出すという。信仰の残る古い土地で、一家にかけられた呪いの正体を探るという内容だ。

両方の作品に共通しているのは、正体不明の呪いらしきものがあるということ。前者は土地と他人に、後者は一家に・・・。

はたしてこの手の呪いというものは、実際にあるのだろうか?

あるのかもしれない・・・。


以前も書いたかもしれないが、呪いの類というのは、受け取らえ方だと思う。ある出来事が起こったときに、それを呪いだと発想できるかどうか。或いは、信じられるかどうか。

例えば、こんな事が実際にあったら、どうだろうか?
その一族は50代になると、ある病を発症する-。異常な発汗、瞳孔が極端に収縮し、首から上がこわばって不自然な姿勢になる。そこに便秘や性的不能が加わり、更には睡眠が奪われ、血圧が上がり、脈が早まり、体が過活動状態になる。 歩行やバランスをとる能力も失われ、やがて命を落とすことになるのだが・・・不幸なことに、思考力だけは残される。

 上に引用したのは、実際に存在する話だ。歴史を辿れば、この一族を襲う悲劇は少なくとも250年前まで確認できる。

「1765年11月、水の都ヴェネツィアで評判の高い医師が謎の死をとげた。この医師の子孫の多くが、同じような病で命を落としていく。」

この病の恐ろしいところは、眠りを奪われてしまうところだ。意識は明確なまま、休むこともできず衰弱してやがて命を奪われる。
一族全員がかかるわけでなく、誰が病魔に襲われるのかは、中年になって発症することによって始めて判明する。

この病の正体は、致死性家族性不眠症(FFI)という遺伝病で、以前話題になった狂牛病と同様のプリオン病らしい。非常に珍しい病で、この病の家系は世界各地で40例(一族)ほどだという。
参考書籍はこれ↓。


本書では、この病の原因を探るうちに、大昔の人類の食人習慣にたどり着く。こちらはサイエンス・ミステリーさながらのノンフィクションで、とても興味深い内容だった。

このような正体不明の病があれば、その原因を呪いと位置づけるか、それとも別に原因を求めるか。プリオン病であると特定できるまでには、科学の進歩を待たねばならなかっただろうと思う。日本でも、風邪は悪い風が病気を引き起こすと考えられ、風の字が当てられている。本当の原因は風が吹くことでなく、ウイルスや疲れやストレスだ。


「地底にお宝でできた街がある。しかし、そこに近づこうとする者は、なぜか皆死んでしまう」・・・。うろ覚えの記憶だが、昔、ルパン三世だかドラえもんだかデビルマンだかでこんな話を見た。原因は、そのお宝がウランでできていたら・・・というような内容だったと思う。


呪いの正体はわからない。原因が不明だから恐ろしさが増幅される。しかし、原因不明だからとって、捨て置くわけにもいかない。迷信だと一刀両断すべきものでもない。原因は不明なだけであって、無いわけではないのだから。そして、もしかしたら科学がその正体を発見してくれるかもしれない。

ゆえに、今後も私は呪い系のものと出会っても、うまく距離をとりながら様子見してみたい。


ところで話は変わる&蛇足だが、前述の「眠れない一族」には、ちょっと興味深いことが書かれていた。ちょっと遠回りになるけれど、本題に触れる前にまずは事前情報を書いておく。

例の遺伝病の原因はプリオンで、プリオンはウイルスや細菌ではなく、タンパク質だ。この異常プリオンは狂牛病の原因にもなっていて、かつて狂牛病の肉を食べることによって人間にも感染するのかどうかが問題とされていた。

ちなみに牛が狂牛病になってしまう原因は、家畜牛の餌にあるらしい。餌の中に牛骨粉、すなわち牛の肉や骨が混じっている。本来、牛は草食である。その草食である牛に、あろうことは肉、しかも共食いをさせていたことになる。

そして調べるうち、イギリス人の中に狂牛病に罹る人と罹らない人がいることがわかった。その違いは、その人の持つ遺伝子コードの違いにある。

つまり、人間には狂牛病にかかりやすい遺伝子コードを持つ人と、かかりにくい遺伝子コードを持つ人の2種類があるということだ。

そして、世界中のどこのどの民俗を見ても、「狂牛病にかかりにくい遺伝子コード」を持つ人の方がが、不自然なほど多い。一言で言うと、ほとんどの人間は狂牛病にかかりにくいのだ。

これらの事実をもとに、本書では次のような結論に至る。

「集合遺伝学を考慮するならば、人類共通の祖先は、ホモ接合体(狂牛病にかかりやすい遺伝子コード)のみを淘汰するような状況に遭遇したとしか思えない。これほど多くのゲノムを変えたのだから、それは人類の生存を脅かすほど厳しい状況だったに違いない」


で、本題というか、何が興味深いというのか。

それは、本書によれば、日本人の多くは“狂牛病にかかりやすい遺伝子”を持っているということ。
世界のほとんどの民俗とは逆に、かつて淘汰されるような状況にあった遺伝子コードを、多くの日本人が持っている。

このことが何を意味するのか。想像すると興味深いですね。


かつてBSEに日本国が過剰反応した理由がわかると同時に、「おいこらアメリカ!」という感じです。TPP、大丈夫でしょうか?

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