2013年8月12日月曜日

川口の心霊スポットについて考える

お盆のこの時期、多くの会社は夏期休暇となるようで、年末年始、GWと並んでの、一斉の大型連休となる。

お正月もお盆も、ご先祖様とともに過ごす行事だ。今では盆だ正月だと言ってもご先祖様を思い起こすことは少なくなっているかもしれない。しかし、日本全国がいっせいに休むほどに定着しているところを見ると、日本人に深く根ざす“日本人らしい何か”が微かにでも残っているようで、少し嬉しい。

ところで、少し前まで、この時期のお昼のテレビ番組で「あなたの知らない世界」という心霊番組がやっていたと思う。いつの間にかやらなくなっている。怖い話や肝試しというのは、夏の風物詩だ。

なぜこの時期に怖い話?とも思うのだが、暑い夏にぞっとすることで涼しさを体感したいのだとか、地獄のカマドが開いて死者が身近になる時期だからとか、お墓に行く機会が増えるからだとか、とにかく夏のこの時期は怖い話を起こさせるきっかけが多いのかもしれない。

さて。
怖い話といえば、以前インターネットで何か調べ物をしていたとき、偶然に川口市内の心霊スポットについて書かれているウェブサイトに行き当たった。

そこには「新井宿にある●●邸」という場所が心霊スポットとして書かれていた。サイトによると、以前にそこの家族が惨殺される事件があり、以来、出るらしい。

新井宿?
一家惨殺事件?
そんな事件あったかな?

どうも記憶に引っかからない。

確かに殺人事件というのは、平穏そうに見える川口市神根地区においても、起こっているといえば起こっている。少し前に、某民家の台所の床下から遺体が見つかるという殺人事件があったし、数年前には、現場は柳崎だが強盗殺人事件があり、連日テレビに報道されるということもあった。

そういった事はあるにはあるが、大抵の場合は事件は話題になって耳に入ってくるし、時には「あの事件の犯人は、実はどこそこの家の息子さんなんだよ」という具体的な話まで漂ってくるし、それに何よりも、記憶に残る。

しかし、新井宿で過去に一家惨殺事件があったなんて話は、記憶にまったくなかった。

もしかして随分昔のことなのだろうか?

場所はどのあたりだろうと思って見てみると、華屋与兵衛(という和食レストラン)の近くらしい。


そこで、思い出した。

なるほど。


確か以前、その近くに空家があり、心霊スポットだとか言って若い人たちが侵入して困っている、という話を聞いたことがあった。
ああ、これは惨殺事件なんてありません。
なんでそんな噂になったのだろう?


その場所、今は空家もなくなり、すでに整備されています(空き地でもありません)。


同じく、川口市内での心霊スポットで検索してみると、検索上位に「侍トンネル」や「カラスマンション」というのが上がってくる。

侍トンネルは、西新井宿にある122号線下の小さなトンネル。今は綺麗に塗りつぶされているが、しかし以前は確かに人の顔が書かれていた。侍の顔(の絵)が浮き出てくるから侍トンネルと言うらしいが、別にこのあたりは侍にゆかりのある戦場でもない。書かれていた人の顔も、私が昔見ていた限りでは、特にサムライが書かれていたという記憶もない。

私の記憶では、ほんの噂話だったかもしれないが、ある画家(もしくは絵を書くのが好きな人)が人の顔を書いているだとか、死んだ人の顔を書いているだとか、あるいは死んだ人の顔が浮き出るだとか、そんな話を聞いた覚えがある。

立地で見ると、トンネルは長い急な下り坂を降りたところにあるのだが、坂の上にはお寺があり、その近くには墓地がある。そういった立地条件が、この侍トンネルに浮き出る人の顔と死者とを連想させたのかもしれない。

ちなみに、この侍トンネルの近くには、かつて観音堂(だったと思う。)があった。今は残っておらず、お堂を見たことのある人は皆無となっている。古くから寺、墓地、神社、そしてお堂があったことを考えると、この侍トンネルの坂の上は立地から言ってもお山の上であり、一種の聖地だったのかもしれない。

しかしこの侍トンネル、決して心霊スポットでも何でもないと思う。人通りが少なく狭い道であるため多少の雰囲気があり、そういった噂に結びついたのだろう。

次にカラスマンションだが、実は私も、以前忍び込んだことがある。戸塚の方、住所は石神で、御成街道のそばにあった建物だ。上の階まで行ったことがある。なんてことはない。ただの廃墟だった。ここもすでに取り壊され、住宅地になっている。

廃墟であるとか、ひと気がなく侵入しやすいだとか、そういった荒れた場所が心霊スポットになりやすいのかもしれない。しかし、実際に事件などがあったというわけではない。さらにいえば、近隣住民からしたら迷惑な話である。


反対に、実際に事件なり事故なりがあり、なおかつ幽霊が出る、という噂話はあるのか・・・。

実は、いくつかある。

あるにはあるが、それらの事件・事故の話は悲しいし、不謹慎だし、そういった話はしばらく囁かれたとしても、遠くから肝試しが来るほどの怪談話には成長しない。
私も、ここでその場所・事柄を書くつもりもない。

こういった本当の話は、怖がったり涼しがったりして楽しむものではないのだ。


さて、人に関する事件事故以外に、怪談にまつわるストーリーとしては、祟り神的な話というのがある。

切ることのできない木、動かせない岩、禁忌のある風習などがそれだ。
ツイッターでは何度か書いたことがあるが、例えば川口市の近隣にある某神社では、ご神体(神社などで拝む対象となるもの)について語ってはいけない、という禁忌がある。語ると、必ず良くないことが起こる。推測だが、これは神社を祭る特定の一族のみに課せられている制約なのではないかと思える。

この種の話、私は基本的に深入りしないことにしている。
呪いの類は信じないのだけれど、ただ、こういった話は面白半分に首を突っ込んで、いいことはないものと考える。たとえ呪いの類でないにしろ、長年のしがらみや、色々な事情が込み入ってそうで、安易に触れるべきではない。

神根地区にも、私が知る限りでは1箇所、こういった祟りなす場所・話がある。いわゆる“動かしてはいけない系”の話だ。丁重にお祀りすることで、祟りは治まったらしいが、個人に関わる話なので詳しい内容は伏せておく。
動かしてはいけない話というと、平将門公の首塚が有名だ。東京大手町にある首塚、いわゆる将門塚は、丸の内のビルが乱立する一角に、奇跡的に残されている。この塚も移転させようとして数々の祟が起こったとされている(この件、私は祟り説はまったく信じてないが、将門塚が残るのは大いに喜ばしい)。

将門塚のようにメジャーな話ではないが、都内にある、とある公園の、池の真ん中にたたずむ小祠にも似た話が伝わる。これも動かすと非常に恐ろしいことがあるという話で、実際に何がしかが起こっているらしい。実際にコトが起こっている以上、深入りするのは極めて失礼な話だと思うので私はスルーしているのだが、話の強烈さのわりに、行ってみると何てことのない公園である。噂を書くのもどうかと思うが・・・噂では、この祠は何かを封印しているのではないかという話。だから動かしてはいけない。


日本人の価値観のどこかに、土地というのは人間のものではない、というのがあると思う。ゆえに家を建てるときに行われる地鎮祭というのは、土地の神に許しをこう儀式であるし、また敷地内に社(屋敷神)をもっている場合、勝手に敷地をいじってはいけないと言われている。

信じるか信じないかはあなた次第。
ご先祖様や、その土地や神とどう付き合うかもあなた次第だ。


それにしても、最近、住宅を買う場合には、ほとんどが他所から越してくる人たちだろうし、その土地の古くについて知る機会はほとんどないだろう。昔であれば、自分が住む土地にかつて住んでいた人を供養するということもあった。いわゆる屋敷先祖というやつだと思うが、こういったことは今では行われていないのが普通だと思う。

しかし、例えば分譲されていた土地が、かつては大きなお屋敷で、その一角に屋敷神を祭っていたとしたら?
それどころか、神社を取り壊して住宅地になっているケースが、川口市内でもいくつか見られる。
神社どころか、古墳を取り壊して家が建てられていると思わしき場所もあるのだし。

地鎮祭というのは、そういった諸々のこともリセットしてくれるのだろうか?


せっかくのお盆なのだから、死者やご先祖様、土地の神様、風習について思いを馳せるのもいいのではないかと思う今日この頃。

ちなみに下の本は、土地に残る忌まわしい残穢について書かれたホラー小説「残穢」。ノンフィクション体裁で書かれているため、実話系怪談のようで面白い。読むと普通に引越しができなくなる。

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