関東地方に多くある神社のなかに、第六天という不思議な神様がいる。
第六天というと、信長が自称したといわれる「第六天魔王」という言葉を思い浮かべる人もいると思うが、何を隠そう、この第六天という神様は信長が自称するとおり、魔王でもある。
第六天を祀る神社は、明治の廃仏毀釈の流れに乗り、ほとんどが祭神を変えられてしまった。神社の名称も変えられてしまったところも多く、信仰も途絶えてしまったため、今となってはどんな神様だったのか、非常にわかりにくくなってしまっている。
だが、この第六天という神様、江戸時代には結構な数で祀られていたらしい。私の住む埼玉県川口市でも、今はほとんど残っていないものの、かなりの数があったことがわかっている。
なぜ、江戸時代の人々は魔王なんか祀っていたのだろう?
と不思議に思ったけれど、よくよく考えてみれば、日本の神様はどれも魔王的な側面を持っていることに気がつく。
そう、負の側面を持つ神はたくさんいて、神様イコール簡単に善悪に分けられない。
たとえば天神様の菅原道真は日本を代表する大怨霊になったし、首が飛んだといわれる平将門も神田明神を代表に根強い人気がある。全国各地で祀られる古代神話のヒーロー、スサノオも、病や災いを引き連れる疫病神的な側面もある。
そういった負の側面が、転じて福を授ける側になる。
悪が善に変わる。
災いが福に転じる。
夢が叶わず志半ばで尽き果てた神が、今度はその願いを叶える立場に変わる。
これは日本の神の、とても興味深い側面だと思う。
乱暴者神スサノオは、日本中の災厄をその一身に背負う。
まるでイエスキリストみたいだ。
第六天という神についても、もしかしたら私たちが知らないだけで、深い意味合いをもつ神なのかもしれない。何か物語を背負っているのかもしれない。
第六天。もしかしたら、あなたのご近所にも祀られているかもしれない。
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